代表理事ご挨拶

代表理事挨拶

日本高気圧環境・潜水医学会代表理事に就任して

柳下 和慶

このたびは、歴史ある日本高気圧環境・潜水医学会の代表理事を拝命し、その名誉と重責に気が引き締まる思いでございます。
1966年に、世界に先駆け第1回高気圧環境医学研究会が発足して以来、日本高気圧環境・潜水医学会は、高気圧酸素医学と潜水医学、高気圧酸素治療をキーワードとして発展致しました。

高気圧酸素医学領域では、従来の適応疾患における効果機序や治療成績に関する研究のみならず、昨今ではpreconditioningや新たな適応疾患への挑戦的な取り組みも多く報告されています。従来低酸素環境で誘導されるHIF1αについても高気圧酸素環境下で誘導されることが報告されるなど、高気圧酸素医学領域の可能性は広がっています。狭い国土の日本では、大深度での土木作業のニーズが高く圧気土木技術が必須であり、高圧則改定後の深深度潜水作業での安全管理など、潜水医学領域での社会的要請は高まっています。発展の余地が十分にある、高いポテンシャルを有するこの奥ゆかしい高気圧酸素医学、潜水医学および高気圧酸素治療について、今後更なる発展に向けて、本学会活動を活発化させる所存です。

本学会活動の目的には、学術、教育、人的交流の発展にあり、特に本学会特有の目的としては治療の安全性担保があります。学術活動の発展に向けては、引き続き会員の皆様の積極的な学術総会への参画や、国内外の学術誌への投稿をお願い申し上げます。そして学会主導の共同研究や、財務状況が改善すれば学会賞の充実や、研究助成、Travelling fellow制度による国際交流も展望しております。教育活動では、鈴木信哉副代表理事が中心となり、改定版である第6版高気圧酸素治療法入門が出版されました。試験制度と連動する教育活動も推進されることと考えます。本年、大学病院HBO連絡会が発足致しました。HBOの周知と新たな担い手発掘のためにも、連絡会活動を通じて大学でのHBOの卒前卒後教育が活発化するよう、連絡会の皆様にはご期待申し上げます。そして、本邦における過去数回の事故事例からも、安全性担保については本学会の最重要事項です。皆様のお力添えをいただきながら、改めて安全に関する教育活動や啓蒙事業を活発化することで、本治療の安全性の向上となることでしょう。

そして、何より高気圧酸素医学、潜水医学および高気圧酸素治療の発展を望む本学会の皆様の意見や思いを受け止める学会運営を、目指す所存でございます。多職種間や、地方会と本会間、複数学会間での情報交換と人的交流を活発化させ連携を強め、全国のHBO関係者の意欲と能力をひとつにすることで、一体化した高気圧酸素・潜水医学の学会を目指して参ります。
また、基盤となる財務環境の整備も必須です。診療報酬改定についても極めて重要な課題ですので、学会として尽力して参ります。

学会発展に向け尽力して参りますので、会員の皆様方のご協力ご支援のほどを宜しくお願い申し上げます。

柳下 和慶 プロフィール

◇学歴

1991年 東京医科歯科大学医学部卒業
2003年 医学博士(東京医科歯科大学)

◇職歴

1991年 東京医科歯科大学整形外科
1999年 UCLA, Department of Orthpaedic Surgery
2000年 東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科 医員
2002年 東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科 助手
2005年 東京医科歯科大学医学部附属病院高気圧治療部 講師
2008年 東京医科歯科大学医学部附属病院高気圧治療部 部長
2012年 東京医科歯科大学医学部附属病院スポーツ医学診療センター センター長(併任)
2013年 東京医科歯科大学医学部附属病院 准教授
2014年 東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構スポーツ医歯学診療センター長(併任)
2020年 東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構スポーツサイエンスセンター長(併任)
2021年 東京医科歯科大学 病院教授
2022年 東京医科歯科大学 統合教育機構教養教育部門 教授
東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター センター長
東京医科歯科大学病院高気圧治療部 部長

◇資格

1998年 日本整形外科学会認定スポーツ医
2006年 日本体育協会公認スポーツドクター
2007年 日本高気圧環境・潜水医学会認定高気圧酸素治療管理医
2009年 日本高気圧環境・潜水医学会認定高気圧酸素治療(現高気圧医学)専門医