8-Q2:爆発事故を起こした装置と同様な条件であれば、セクリスト社以外のアクリル製チャンバーも爆発する可能性があるのでしょうか。

A2:圧力、発火源、温度、素材等、同一の条件が揃えば当然同タイプの機器は同じような事故の危険を孕みます。特定メーカーの特定の機種に限定した問題ではありません。

        (平成9年2月)


8-Q3:今回の事故は2.7ATAで発生し、前回の茨城の事故は2.0ATAで発生しました。今回は爆発、前回は火災という事ですが。装置自体が第1種の場合2.0ATA以上にならない様な装置にすることはできないのでしょうか。また治療に対する圧力は、疾患別にガイドラインが正式に定められているのでしょうか。

A3:技術的には当然可能であり、また研究用ではありますがそのような装置も現存します。しかし第1種装置の場合、最高2.8ATAまでの治療圧が許容され、また高い治療圧を必要とする適応がある以上、最高治療圧を2ATAに限定することは適応が限られることになるかと思います。

現在の安全基準では疾患別の治療圧力値は規定されていません。

        (平成9年2月)


8-Q4:装置内の酸素にふれる場所に、油が塗ってあるのですが、そのまま使用しても良いのでしょうか。

A4:通常の油脂類は、その酸化が高気圧酸素環境下で亢進することから、高気圧酸素治療装置内での使用は禁忌とされます。どのような油かわかりませんが一般的には除去すべきと考えます。

       (平成9年2月)


8-Q5:尿失禁の患者に対し、紙オムツを使用したまま第1種装置で純酸素加圧治療をしてもよろしいでしょうか。またキセノンガス使用検査前後の患者を第1種装置で純酸素加圧治療しても良いでしょうか。

A5:止むを得ないでしょう。但し治療前の所持品チェックを厳重に行うという前提条件の下でです。キセノンガスは非燃焼性、無毒の不活性ガスです。仮に HBO前に検査を受けキセノンガスを吸入したとしても、HBO まで体内に残留することはまず考えられません。支障ないものと考えます。

        (平成9年2月)


8-Q6:第1種装置で治療中に患者がよく「暑い、或いは寒い」と言うのです。どの程度暑いのか、また寒いのか温度計がついていないので外部ではわからないのですが、温度計を第1種装置に付けることはできないのでしょうか。

A6:温度計のない第1種装置があるとは驚きました。JIS 規格(JIS T 7321) に定める第1種装置内環境監視系は、圧力、温度、換気流量を監視できることとあります。どの装置にも予備の貫通孔或いは端子がある筈です。メーカー或いは装置導入時の代理店に要求して下さい。

        (平成9年2月)


8-Q7:第1種の場合、モニタリングは心電図と脳波が可能である、となっていますが呼吸波の測定は可能でしょうか。

A7:第1種装置で規制しているのは外部から電圧或いは電流を負荷し、その変動を観察することにより生体現象を検討しようとする行為です。例えば、外部から電圧が負荷されているリード線が、臨床使用の最中、無意識に暴れ出した患者により引き千切られた場合、断端がショートし火花を生ずる可能性が皆無とはいえません。第1種装置では、生体個有の電気現象を装置外部で増幅して観察することだけが許容されている所以です。どのような原理の呼吸波測定かわかりませんが、上記の理由を参考に測定機器製造メーカーとご相談下さい。

        (平成9年2月)


8-Q8:カテーテルを留置したまま、第1種装置で治療するにはどういう処置をすれば良いでしょうか。

A8:どの部位のどのようなカテーテルかわかりません。血管内カテーテルであれば内部をヘパリン水で満たし、カテーテル端は止め栓、或いは血管鉗子でしっかりと閉鎖することが推奨されます。

        (平成9年2月)


8-Q9:ニトロガムテープを貼ったまま、第1種装置で治療をしても良いでしょうか。またニトロガムテープを貼ったまま治療するにはどんな対応が必要でしょうか。

A9:ニトロガムテープとは冠拡張剤テープのことと思われます。とするといつ狭心症発作を起こすかわからない患者さんを治療されるのでしょうか。理想的には装置内には余分なもの、疑問を抱くようなものは持ち込まないことが鉄則です。しかしこの患者さんにとりニトロ剤が必要不可欠であるならば、テープ自体は貼付したままでも可と存じます。しかし問題点は、そのようなハイリスクの患者さんを第1種装置の中へ収容しHBO を行おうとすることにあるように思われます。原疾患はどのような適応なのでしょうか。

        (平成9年2月)


8-10:治療中にアメ等を与えて万一喉につめて窒息をした場合、急速減圧をするべきでしょうか。それとも通常の減圧をするべきでしょうか。急速減圧をした場合の患者に与えるダメージはどの程度なのでしょうか。

10:逆に回答者から質問したく思います。窒息は緊急事態です。躊躇は許されません。そのような時に通常の減圧パターンを採る余裕があるのでしょうか。緊急減圧のダメージを考慮し時間を空費すべきでしょうか。酸素加圧とはいえ考え得る障害は減圧症と圧力外傷でしょう。これらはもしも救命に成功した場合、後からでも対処できると思われます。

        (平成9年2月)


8-11:O2中毒予防ののためにビタミンCとEを投与していると聞きましたが、それはノーマルな治療法なのでしょうか。投与した方が良いのか、或いはどちらでもよいのでしょうか。

11:ビタミンCとEとは抗酸化剤です。活性酸素・フリーラジカルの攻撃から生体を守る物質とされ実験的なデータが沢山示されています。このことからかつて米国で、特にビタミンEがHBO臨床の場で多用されたことがあります。この質問はそのことに基づくものかと思われます。しかし酸素毒性の、特に人体に対する影響は非常に複雑です。試験管内で示された成果がそのまま人体に応用できるとは限りません。少なくとも今日ではノーマルな治療法ではありません。回答者自身、患者さんにそのような目的で投与したことはまったくありません。

        (平成9年2月)


9-Q1:第1種装置で、難聴または、全盲の患者を治療する場合の対策、コミュニケーションの方法について教えて下さい。点滴ラインは外すとしても気管内挿管をしている患者の場合、気道確保はどこまですればよいのか、またどの様な処置をして治療を開始すればよいかお教え下さい。

9-A1:高度の視覚或いは聴覚障害がある患者の場合、意思伝達手段を確保することは非常に重要です。聴覚障害の場合は筆談で、視覚障害の場合は交話装置で意思の疎通を図りますが、大切なのは治療開始前の準備です。高気圧酸素治療中にどのようなことが起こり得るか、そのときどう対処したらよいのかを予め患者さんに十分に説明し理解してもらいます。またどの様な手段で意思を交わすにしても、治療中の合図法など通信の約束ごとを双方がしっかりと確認しておく必要があります。視覚、聴覚の双方が障害され意思確認の方法が皆無の患者さんを単独で装置内へ収容することは危険です。むしろ他の治療法を採るべきではないでしょうか。

 高気圧酸素治療は呼吸と循環が確保されて成り立つ治療法です。気道確保は十分に行います。カフの膨張に空気を用いないことは常識かと思います。

        (平成9年7月)


9-Q2:酸素環境下の爆発要因として酸素の支燃性、高気圧環境下での発火点の変化などが考え得ると思いますが、気圧と発火点の関係について教えて下さい。

A2:高気圧環境下では圧力の上昇に伴い、可燃物の着火温度は急速に低下します(Shilling:The Underwater Handbook)。空気加圧だからと安全性を過信しないことが大切です。(下図参照)

        (平成9年7月)


9-Q3:義歯は除去した方がよいでしょうか。

A3:装置内で食事をするわけではありません。当然、外すよう患者さんに協力を求めて下さい。万一、治療中に酸素中毒の痙攣発作を起こした場合、危険でもあります。

        (平成9年7月)


9-Q4:人体の中に埋入されている人工骨頭、プレート類、リザーバーなどはどうでしょうか。

A4:これらの医療用機器類は高気圧酸素治療の都度、取り外せる性格のものではありません。前二者はそのままで可、リザーバーはその種類、構造を十分に検討し、場合によってはメーカーに照会するなど安全性を確認して下さい。

        (平成9年7月)


9-Q5:HBO中に興奮状態となった患者、または痴呆状態の患者が持続点滴の注射針を抜針してしまった場合、緊急減圧を行うか、或いはHBOを中断して通常の減圧を行うか、いずれを採るべきでしょうか。

A5:そのときの状況で判断すべきでしょう。完全に抜針してしまったなら静脈系からの失血はそれほど多くないかもしれません。しかし患者が装置内部で暴れたり力んだりすると状況は変わる可能性があります。HBOを中断することは必要ですが、減圧はそのときの状況で判断します。しかし可及的、緊急減圧は避けたく思います。

        (平成9年7月)


9-Q6:意識障害患者に着用したオムツ(パンパース等)の安全性は如何でしょうか。

9-Q7:ギプス材に使用される巻き綿は第1種装置に持ち込んでも大丈夫でしょうか。

A6:A7:第1種装置内で出火した場合、いかなる物質も燃焼する可能性を有します。要は点火源を絶対に装置内に持ち込ませないことで、特にギプス、オムツなどを装着したままHBOを行う場合、治療前のチェックはことさら厳重に行うことが求められます。

        (平成9年7月)


9-Q8:第1種装置における内部温度・湿度のコントロール法は、どのようにしたらよろしいでしょうか。

A8:高気圧酸素治療装置の場合、加圧、減圧の過程は断熱圧縮、断熱膨張に近い状態で、そのための温度変化が避けられないことはご存じと思います。空調装置を欠く第1種装置では温度、湿度の効果的な制御ができません。一つの工夫は装置が収容されている部屋全体の空調を徹底的に行うことです。また装置内部の患者が不快に感ずる原因の一つは、装置内部を灌流する気体に動きのないことで、姑息的ではありますが内部気体の灌流量を増やしたり灌流頻度を多くするのも一つの工夫です。残念ながら現在のところ、この問題を技術的に解決した装置はありません。

        (平成9年7月)


9-Q9:イレウスの治療圧力は何ATAが推奨されますでしょうか。2ATAでもよいのでしょうか。 

A9:腸管内気体の圧縮効果、脱窒素効果或いは腸管組織の低酸素改善効果を得るには高い治療圧が有利です。腸管嚢状気腫(pneumatosis cystoides intestinalis)の場合、2ATAの通常のHBOで有効であったとの報告もありますが(Ina et al.,Dig.Endosc.1993)、救急的適応であるイレウスの場合、治療装置にもよりますが、通常2.8ATAまたは3ATAの治療圧が優先して用いられます。

        (平成9年7月)


10-1:CO中毒の際の治療回数もですが、糖尿病、その他循環障害による壊疽などの治療回数・治療評価に関する目安のようなものをご存じでしたら、お教え下さい。

A1:米国のUHMSが最近のニューズレター「PRESSURE(1998 27巻1号)紙に治療指針、特に治療回数に関する指針を載せました(参考:次ページ表)。米国とわが国とては適応のとらえかたに相違がありますが、この表がひとつの参考になるでしょう。

        (平成10年2月)


10-2:第1種装置での掃除で粘着物がチャンバーの内部に付着した場合に、ベンジン等を使用してもよいのでしょうか。

A2:揮発性の薬品、洗剤はチャンバーの塗料或いは缶体材料と反応すること、可燃性のガスを発生・残留させる可能性があることなどの理由により使用は禁忌です。中性洗剤を用い洗浄後はよく乾燥させて下さい。

        (平成10年2月)


10-3 第1種装置で治療中の、排便・排尿の対策について知りたいのですが。

A3:治療前に必ず排尿、排便を済ませることが原則です。ご質問が第1種装置内での失禁対策であるとすれば紙オムツ類を用いるしかないでしょう。

 その際はオムツ内に危険物(使い捨てカイロ類)を持ち込んでないかどうか 念入りな点検が必要です。

        (平成10年2月)


10-4:HBO治療に伴う合併症が発症する可能性についてお教え下さい。
 治療開始前に胸部レントゲン等を取った方がよいのでしょうか。
 中耳カタルが治療後に発生することを経験したので、それを予防する方法がありますでしょうか。

A4:HBOは呼吸と循環が正常に保たれて成り立つ治療です。従ってその前提となる胸部X線写真と心電図の治療前チェックは当然、実施すべきです。

  また胸部X線写真はHBOを行う際に禁忌となる肺の空洞性病変を発見するためにも重要です。

  もしも救急的な症例でなく、それが可能であれば耳鼻科医による耳管の通気検査は必ず実施すべきHBO前検査のひとつです。中耳カタルはHBO前の十分な耳管通気によりある程度は防げます。また耳に関する患者さんの訴えを見逃さず、早目に耳鼻科医に紹介するのも合併症を少なくするコツです。

        (平成10年2月)


10-Q5:第1種装置(純酸素加圧の場合)での減圧症治療はどこまで可能でしょうか。具体的な方法、加圧条件・加圧時間・治療期間等お教え下さい。又第2種装置のある施設に搬送するべきでしょうか。

A5:わが国に普及しているHBO装置の圧倒的多数は小型の第1種装置です。間欠的な空気呼吸のできない、酸素加圧専用の装置で対処可能な減圧症治療の指針が「減圧症および減圧に伴う空気塞栓症に対する再圧治療に関する勧告」(日本高気圧環境医学会、昭和5612月1日)に載っています。詳細はこの勧告を参考にして下さい。

        (平成10年2月)


10-6:ドレナージチューブや導尿カテーテルは入れたままで高気圧酸素治療をおこなっても良いでしょうか。

A6:不要なものは可及的、患者から取り外してHBOを行うのが鉄則ですが、医療上止むを得ないカテーテル類は末梢を盲端として装置内に搬入することが推奨されています。バルーンを有するカテーテル類の扱いはご存じのことと思います。

        (平成10年2月)


10-7:熱が38℃〜40℃ある患者をHBO治療することの可否並びにその効果は如何なものでしょうか。

10-8:血圧が高い患者に対する高気圧酸素治療の可否とその注意点をお教え下さい。

7:A8:高熱を発した患者さんにHBO治療を行うことはできません。効果などありません。解熱処置を優先させて下さい。血圧が異常に高い患者さんもHBO禁忌です。循環器科医師による血圧管理をまず行って下さい。

        (平成10年2月)


10-9:同じ患者を一日2回以上HBO治療を行っている施設はどのくらいあるのでしょうか。又その効果はどうなのでしょうか。

9:そのような統計はありません。施設ではなく適応の問題なのです。効果の判定は疾患によって異なります。

        (平成10年2月)


11-1:最近47歳の男性の下肢のガス壊疽で大腿上位切断後、高気圧酸素治療1日2回、5日間施行し全身状態、切断面の非常な改善を見て喜んでおりました夜、急激なARDS発生にて死亡しました。この様な症例は特異な症例と考えるべきでしょうか。これからもこの様な危険を考慮しなければならないのでしょうか。

A1:この症例の経過に関する詳細を知りませんが、重症感染症である以上、何時でも、何事でも起こり得ると考え対処することが必要です。質問の意図がわかりませんが、もしも急激なARDSの発症にHBOが関与したのでは、との意ならばそれは不明です。

        (平成10年7月)


11-Q2:第1種装置で純酸素加圧の場合のことですが、オムツを使用していなければならない患者を治療装置に収容する場合、紙オムツでも良いでしょうか。他に何か良い方法があれば教えて下さい。

11-Q3:前問と同じ様な患者の場合IVH等のチューブ類を固定しているテープ類はビニールテープでも良いのでしょうか。または紙テープに交換する必要がありますでしょうか。

A2:A:この種の質問はセミナー開催の都度、必ず出てくる質問です。重要なのは、点火源になり得る物品の搬入を阻止することであって、治療上必要なもの、患者さんから取り外せないものまで除去することではありません。高気圧酸素環境下でいったん点火すれば難燃、不燃とされているものでさえ燃えるのです。無用な品物を装置内に持ち込まないよう指導することも大切ですが、紙オムツや粘着テープの使用が不可欠なら止むを得ないでしょう。

        (平成10年7月)


11-Q4:シリンジポンプ及び輸液ポンプのバッテリーによる使用は、安全面において第1種装置と第2種装置において、どう違うのですか。特に純酸素加圧方式の第1種装置でも使用可能でしょうか。

A4:両者とも第1種装置では使用できません。また第2種装置であっても、この種のポンプは圧センサーの誤作動により停止してしまいます。それを解除するための工夫を試みている施設もあります。

        (平成10年7月)


11-Q5:ペースメーカー(埋め込み型)留保患者に対して、第1種装置純酸素加圧で安全に治療は可能でしょうか。

A5:ペースメーカーも患者から取り外せない大事な治療用機器です。ほとんどの機種は高気圧環境下でも正しく作動します。詳しくは下記の文献を参照して下さい。

JM Kratz et al. :Cardiac pacing under hyperbaric conditions.Ann Thorac Surg.  66-68.1983.

        (平成10年7月)


11-Q6:夏期に第1種装置で治療中カプセル内が曇り、患者さんの観察ができないことがあります(特に加圧時)。何か良い方法があれば教えて下さい。

A6:第1種装置内部の換気の問題です。かつて回答者自身、第1種装置を操作していたとき同じような現象を経験しました。血管外科の患者さんで交感神経節切除を受けている方だったため、特に発汗量が多かったように記憶しています。そのとき行ったことは、換気量を多くし換気回数を増やすことでした。空気調節機構を欠く第1種装置では、この程度の対策しかないのではと思いますがその他の工夫があったら教えて下さい。

        (平成10年7月)


11-Q7:治療衣は静電気の問題というより、着替えさせることによりボディチェックに意味があると考えて良いですか。

A7:静電気除去およびボディチェック双方の意義があります。山梨厚生病院における高気圧酸素治療装置爆発事故原因調査の過程で、静電気エネルギーは着火エネルギーとしては不十分であることを証明しましたが、排除すべき不要なエネルギーであることには変わりません。また山梨、ミラノ双方の事故例から患者更衣の重要性を学びとった筈です。

        (平成10年7月)


11-Q8:第1種装置での加圧について

1)MRSA感染症患者について

  a治療順番は最後が良いでしょうか。

  b装置内の消毒の方法はどのようにすればよいでしょうか。

  c治療中感染の事例はないですか。

2)挿管中の患者について

 安全協会ニュース第9号で「カフの膨張に空気を用いないことは常識」とのコメントがありますが、具体的にはどうしたら良いのですか。

3)ギプス装着中の患者について

 a近年はプラスチック製のギプスが普及していますが、そのまま治療して問題はありませんか。

 bガーゼの固定にビニールテープを用いる事がありますが、問題はないでしょうか。

4)空気加圧について

 酸素加圧の装置を使用していますが、これを空気加圧に変えて治療することは可能でしょうか。もし可能とすれば費用はどれくらいかかりますか。

A8:1)MRSA感染症については鹿児島大学病院救急部の有川和宏先生が沢山の経験例をお持ちですので、ご照会下さい(099-275-5621)。     

2)生理食塩水を用い膨らまします。

3)前問をご参照下さい。

4)可能です。お使いの装置のメーカーにお問い合わせ下さい。 

       (平成10年7月)


11-Q9:2ATAの圧がかかっても、どうして体は変形しないのですか。

A9:人体はほとんどすべて水分です。液体は圧力をかけても歪みません。子供向けの科学書を探して下さい。

        (平成10年7月)


12-1:減圧症患者の治療についてテーブル6とテーブル5の使用区分について、できる限り、具体的にお教え下さい。 

A1:テーブル6とテーブル5の治療上の区別についてですが、先ず、大切なことは、その人が減圧症であるかということです。この診断は医者がしなければなりません。減圧症の診断基準は3項目あります。第1項目はダイビング後24時間以内に発症した症状であることです。第2項目は臨床的な諸検査で減圧症以外の病気の診断ができないということです。第3項目は症状が減圧症の一つであることです。

  減圧症診断が付いた段階で、次にすべきことはその減圧症が酸素再圧治療の対象となるか否かです。ここでは、日常生活に支障を来しているか否かが重要な点です。例えば、関節が時々痛くなるが、日常生活に支障はないと言ったときは、酸素再圧治療の適応がありません。私は急性減圧症には自然治癒があると考えています。全ての急性減圧症が治療の対象となるわけではないのです。治療しないと骨壊死になりやすいのではないかという意見がありますが、そのような学問的な統計はありません。

  このようにして、急性減圧症の診断が行われるわけですが、その時には一刻も早く治さないと患者が関節が痛くて夜も寝られない状態にあるわけです。ですから、正確に減圧症を治せる治療パターンである、テーブル6を施行するわけです。テーブル5が対象となる急性減圧症は、私の意見では、元々酸素再圧治療を必要としない急性減圧症と思います。

        (平成11年3月)


12-2:第1種治療装置での減圧症治療について先生のご意見を具体的に教えて下さい(減圧症神経症について具体的に)。

A2:私は第1種治療装置で、減圧症を治療した経験がございませんので、この質問に対してはお答えはできません。一つ言えることは、第1種治療装置は減圧症の緊急時にしか使用できないと言うことです。どうしても空路、遠方に送らないと、第2種治療装置がないといったとき、緊急的処置として、患者さんと十分に話し合って決めることです。

  減圧症神経症とは、私が作った名称です。インストラクターの方と相談したところ、減圧症にかかってはいけないんだ、減圧症は怖いものだという教えを行っているためだとわかりました。減圧症にかかるようなダイビングをさせないために、減圧症は恐ろしいものだと指導しているというのです。

  これを聞いて、納得がいきました。現実は、治療を要しない減圧症、皮膚がピリピリする、肩が時々痛むなどの症状が、私の病院では少なくとも8割以上います。電話で相談してくる人は、先ず、ほとんどが減圧症神経症といえます。

        (平成11年3月)


12-3:高気圧酸素治療中に、緊急減圧をした場合の患者の状態(障害)はどうなるのでしょうか。

A3:緊急減圧とは通常、8m/minと言われています。この緊急減圧をした場合にどうなるかと言うことですが、息こらえをしない限りは、通常問題が起きないと思います。息こらえをしてしまったときは、肺破裂が起こります。年寄りなど、理解が不十分な患者さんには緊急減圧に耐え得ることが困難です。減圧症であれば、先ず、トラブルは起こりません。減圧症としての症状は残るはずです。

        (平成11年3月)


12-4:テーブル5で減圧症(ベンズ)60feetの治療から減圧中痛みの増大を訴えたケースがあります。この場合、そのまま減圧しても良いのか、oxygenationした方がよいのか教えて下さい。

A4:酸素再圧治療時、関節などの痛みが増大するのは、減圧時に多く見られます。加圧時、例えば60feetにまで加圧した直後に痛みを訴えたとすれば、その痛みは関節などではなく、その他の痛みではないでしょうか。もう一つの考え方としては、痛みが感ずるようになったという見方もあります。

  つまり、良い方向に進んでいると言うことです。ですから、このような痛みは60feetから30feetに減圧時に現れることがあり、我々は酸素再圧治療に反応するパターンと判断をします。

        (平成11年3月)


12-5:減圧症患者の血液濃縮マイクロバブル?について機序と悪影響についてお話ししていただけないでしょうか。

A5:血液濃縮とマイクロバブルは異なった問題です。血液濃縮は一つにはダイビング中汗をかいているために、血液は濃縮状態となります。もう一つはバブルの影響により、血管壁の内皮細胞が障害され、血管壁の浸透圧が高まり、組織間隙に水分が漏れ出て、結果的には血液濃縮となります。マイクロバブルはバブルそのものであり、水中では圧がかかっているために血液中のバブルはまだマイクロ状態になっていますが、急激な減圧によりこのマイクロバブルが一気にバブルになると言われています。

      (平成11年3月) 


13-Q1:高圧タンク内に可燃物がもちこまれていた場合、治療開始時より75分後に爆発すると平成9年医療ガス保安管理の講習会で言っていましたが、何故減圧時に集中するのでしょうか。

A1:装置内火災事故が減圧時に集中するというのは誤解です。確かに過去の事故は加圧開始からかなりの時間が経過してから発火する例が多く、そのような印象を与えました。また川崎エンジニアリング社が社内で行った高気圧下火災実験でも、加圧開始から爆発的燃焼に移行したのは69分経過してからでした。これは衣類等に点火源がくるまれた状態で存在したこと、爆発的燃焼への移行には、一定の蓄熱効果が必要なことなどに因るものですが、一昨年の秋、イタリアのミラノで生じた事故は加圧途中の1.8ATA、加圧開始から78分という短時間での出火でした。その原因はいま調査中ですが質問者の先入観は捨てるべきです。

              (平成11年7月)


13-Q2:HBO事故について着替え・ボディチェックが山梨の病院で実行されなかった不幸は技士数人で治療をしている病院では、それが日常的だったのか、それとも、たまたまだったのか知りたいです。

A2:当該の病院が日常どのようなHBO管理をしていたかについては、公式の回答以上のことはわかりません。しかしそれがたまたまだったとしても許されることではなく、もしも日常的であったとしたら、もっと悪質な安全管理違反であったというべきでしょう。要は他山の石としないことです。

         (平成11年7月)


13-Q3:チャンバー内の消毒について先ほどの話でグルタールアルハイドを使用しているとの事でしたが、治療の都度(患者入れ替え毎に)行うのですか。その使用時期について説明して下さい。

A3:毎回治療終了時に消毒するのではなくMRSAが出ている患者の場合のみ消毒します。例えばMRSAに感染した患者の治療依頼がきたときは、その患者の治療はその日の最終回に行い、その治療終了後にグルタールアルハイド2%の水溶液でタンク内全体を清拭した後、装置の扉を閉じ約1時間放置し、水拭きして薬剤を拭き取った後、約20分間空運転をして臭気、湿気を除去する方法をとっています。

          (平成11年7月)


13-Q4:2基の装置を同時に使用しないとの事ですが、緊急患者が出た場合はどうするのですか。又2基の装置の理想的な使用方法を教えて下さい。

A4:救急患者が2名同時間に入った事は今までございません。人員的な問題もありますが、もし2台を同時に運転開始した場合、万一一方の患者に急変があると、減圧をしてタンク外へ出さなければならないので、その作業中は他の治療継続中の患者の監視ができないので、私どもは2台同時使用は禁止としています。

         (平成11年7月)


13-Q5:ペースメーカー使用(埋込型)の患者に対する取り扱いについて、どうしたら良いのか、はっきりとしたことがわかりません。ペースメーカーへの影響と、それに伴う患者さんへの影響をお教え下さい。もし何か前例がありましたらご教授願います。

A5:ペースメーカーについてはごく一部の機種が高気圧下で影響を受けるとの報告がありますが、他方でわが国に輸入されている機種は影響を受けないとも言われています。詳しくは代理店にお問い合わせ下さい。参考になる文献は下記の2編です。

1)JM Kratz, JG Blckburn, RB Leman and FA Crawford, Cardiac Pacing under Hyperbaric Conditions, Ann Thorac Surg, 36,66-68,1983.

2)宇都宮精治郎、岩田浩一、田中秀憲、中尾宏、中村夏樹、古賀久士、:高気圧酸素治療法のpacemakerに与える影響pacemaker患者に対する高気圧酸素治療とメーカーからの回答九州・沖縄地区高気圧環境医学懇話会誌.4,22-25,1999.

         (平成11年7月)


13-Q6:HBO治療の患者で血管内留置物(ステント)やペースメーカー等がある場合は物理的に問題は無いですか。

A6:問題はありません。肝心なのは点火源を装置内へ持ち込ませないことです。

         (平成11年7月)


13-Q7:脳梗塞の患者を治療するとき、当院では2ATAで行い、挿管中の患者も同じ圧力で治療することにしていますが、重症な患者の場合に肺炎を併発する場合が多いのですが、どの程度の肺炎までHBOを続けてよいのでしょうか。

A7:脳血管障害等で肺炎を併発した患者は高気圧酸素治療によって、その症状を増悪させるという意見もありますが、どの程度の肺炎までを基準とするかはちょっと説明できません。

A7:我々のところは第2種装置ですので、肺の障害がある患者の場合は吸引とか色々な問題がありますので、看護婦か医師が一緒に入って治療します。第1種装置の場合は患者自身が呼吸障害をコントロールできるという保証がないと、危ないのではないのでしょうか。従って肺に障害を持つ患者は自分の呼吸管理が十分できるかどうかによって決めるべきではないかと考えます。

         (平成11年7月)


14-Q1:クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に対して予防的にHBOを行うことがありますか。

A1:クモ膜下出血の術後早期に、例えば硬膜外ドレーンを抜去した翌日から高気圧酸素治療を開始してきましたが,重篤な脳血管攣縮に陥ることが少なく、また起こらないことも多い印象です。クモ膜下出血術後早期からの高気圧酸素は脳血管攣縮への移行の予防効果があるように感じています。今後のクモ膜下出血の治療は血管内外科で行われることが多くなると予想されますが、そうなれば高気圧酸素がこの疾患で大きな意味を持つことになります。

                         (平成12年3月)


14-Q2:第1種装置における装置内温度管理(調節)について、良い方法がありましたらお教え下さい。

A2:以前、群馬大学に見学にいった時に鋼鉄製の第1種装置(KH0-200)でタンク内底部にボイラー(温水)の配管を接続して温度調節しているのを見てきました。実際は特注品でコスト的にはかかるかと思います。現在の主流であるアクリル製の第1種装置では、配管が難しいのではないかと思います。本文で書いていますように室温のコントロールを十分考えてやるしかないのではないでしょうか。

A2:以前、私が某メーカーの営業として全国各地で色々な病院を訪問し多数の技士さん達とお会いしましたが、この要望は非常にたくさんの方々から出て参りました。第1種装置としては必要な事と思います。私も色々と研究をして参りましたが、メーカーとしては絶対安全と確実が第一条件となりますので、慎重な検討が必要です。訪問した某病院では装置内マットレスの上に高低体温維持装置(冷温水を循環できる循環マット)を敷き、装置の予備貫通穴を使って冷温水パイプを外部へ引き出して、そのパイプより加圧時は冷水、減圧時には温水を循環させて、背中だけではありますが、快適感を患者に与える方法はないものかと実験しているところへ出会ったことがあります。私も実際に入ってみました。確かに効果はありますが患者個々の体感差・安全性・供給する温水冷水の温度設定と、その循環タイミング・加圧減圧速度等様々な問題があり、今後の研究課題であると考えます。現在も各メーカーでは研究開発の対象になっていることと思います。

[文 献]

 1)小熊美行ほか.第1種装置における装置内不快環境緩和対策について:日高圧医誌 291-1994

2)相沢 朗ほか.高気圧酸素治療装置用温度調整装置の検討:日高圧医誌301-1995 

3)小野寺達志ほか.高気圧酸素治療装置内での温度変化について:安全協会ニュース42-1996

4)相沢 朗ほか.高気圧酸素治療装置用温度調整装置の検討:安全協会ニュース42-1996

       (平成12年3月)


14-Q3:脳血管障害に対するHBO適応として、脳浮腫があるということが一つの条件になっている様ですが、産業医大脳外科が以前から発表されている様に、きわめて早期に虚血の状態になりはじめた時、梗塞が完成していない早期にHBOを開始するのが良いということでしょうか。適応が拡大していると考えて良いのでしょうか。

A3:脳梗塞では発症から3時間以内の治療結果がその予後を大きく左右します。いくつかの治療法のなかで高気圧酸素が最も現実的で治療効果の高いものと思います。ただ、問題はこの間に治療開始できる症例が極めて少ないことです。さらに、高気圧酸素だけではなく、他の薬剤、例えば低分子デキストランや少量ヘパリンなどを併用することも重要です。また、保険適応が拡大しているわけではなく、脳血管障害、脳梗塞(脳塞栓、脳血栓)、あるいは低酸素脳機能障害が、この病態に合致した保険診療診断名になります。

        (平成12年3月)


14-Q4:脳梗塞の治療で(HBO+低分子デキストラン+ヘパリン)の3つを併用されていますが、これと(HBO+低分子デキストラン)あるいは(HBO+ヘパリン)または(HBOなしの低分子デキストラン+ヘパリン)との比較検討をされているのでしょうか。コントロールスタディは既に行われているのでしょうか。

A4:超急性期脳梗塞の治療法として、HBO+低分子デキストラン+少量ヘパリンを組み合わせております。時間的余裕のある疾患であれば、十分説明して治療を選択して頂くことが可能ですが、超急性期治療では来院後の1020分間が大きな意味を持ちますので、最良と思われる治療法をお勧めしております。従いまして、比較試験は行っておりません。ただ、後述しますが、Cox検定により治療効果の比較は容易に可能です。

        (平成12年3月)


14-Q5:意識障害(特にCPA蘇生後脳症)の患者を何回までHBOに入れるべきでしょうか。「効果なし」という判断の基準は存在するのでしょうか。

A5:急性期の意識障害では23回の治療で大体の判断が可能で、少しでも改善があれば1週間から10日間ほど続けます。また、慢性期の特殊な意識障害では、1週間行って治療効果の判断を行いますが、改善があればその後2週間ほど続けます。評価法には脳波を用いることもありますが、神経学的所見が中心です。

A5:意識障害患者へのHBO治療は2週間が限度と考えています。2週間治療して改善がみられないものは継続しても効果は期待できません。しかしこの間に日毎の改善がみられるものはさらに継続して症状が固定するまで治療すべきと考えています。

       (平成12年3月)


14-Q6:MRSAに効果があることはわかりましたが、VREに対しても期待できるでしょうか。

A6:MRSAに有効と言いましたが、個人的にはVREにも有効と考えます。しかし現段階でVREが出ますと隔離され、病棟内の移動さえ禁止されますので現実的には治療はできないと思います。

         (平成12年3月)


14-Q7:感染症には原因菌が何であれ、すべて著効ということでしたが、真菌感染症ではどうでしたでしょうか。

A7:副鼻腔に起こりやすいRhinocerebral mucormycosisは特殊な真菌感染症ですが、抗真菌剤との併用で高気圧酸素が有効であることが報告されています。しかし、頭蓋内まで広がった例を経験しておりますが、十分制御することはできませんでした。

A7:正直いって真菌に対して細菌感染ほど効くという感触はもっていません。しかし多くの真菌感染患者は基礎に細菌感染があり、日和見感染として真菌が出現してきていますので、基礎の細菌感染を制御することによって、真菌も抑制するように感じています。

         (平成12年3月)


14-Q8:CRP、T.bilの低下、血小板数の増加のdataはすばらしいですが、HBOを行わない症例との検討はすでにされているのでしょうか。

A8:対照例との比較試験はほとんどの場合不可能です。このような問題を解決するためにCox検定を行います。この検定法では、新しい治療を行う前の治療例が対照症例となりますが、治療結果に有意差が生じた際には、有意差に与えた因子、例えばHBO、年齢、性差、時代背景、手術法の違いなどが、どの程度影響しているのかが簡単に出せるようになっています。

A8:言われる通り、Control群との比較がないのが隘路です。しかし対象患者は生命の危険にさらされている重症患者ですので、治療を断ることは道義的にもできません。ですからこのような患者にHBO療法を導入前の3年以前の患者群との比較を今後試みようと考えています。

         (平成12年3月)


14-Q9:今回リンパ浮腫についてお話いただきましたが、症状の改善があり、有効な治療と感じました。リンパ浮腫について、もう少しお話と予後についてもお話して頂けませんでしょうか。

A9:リンパ浮腫への有効性はこの1年内の経験で、我々も周囲も驚いた症例群です。従って何故効くのかと聞かれても正確な解答は持っておりません。しかし浮腫を生じている組織は圧迫によって循環の障害を強いられ、さらに低酸素状態に陥り浮腫の増強を来たすといった悪循環に陥っていると考えられます。そういった組織に溶存酸素が届き浮腫の軽減をみると圧迫の為に抑制されていた循環が回復し、さらなる浮腫軽減に繋がるのだろうと考えています。文献的にはリンパ浮腫の組織には活性酸素の関与も示唆されており、この辺りにも関係があるのかもしれません。予後に関してですが治療を止めて一番古い人で3ヶ月、新しい人で2ヶ月経過していますが、未だ再発はみておりません。この状態が持続すれば根治的治療として応用できるのではと考えています。         (平成12年3月)


15-Q1:チャンバー内に、埃とか身体から落ちる垢などがあった場合、何か影響がありますか。

A1:安全基準によると、第24条第2号、第83条第5号、第84条第8号などで室内の換気量は、患者の体感温度及び装置内の湿度変化を考慮しなければならないとなっています。このことは、チャンバー内は常に換気が行われ、埃とか垢とかの除去が常に行われていなければならないことを意味します。一方、酸素分圧が高濃度であっても、これらの埃とか垢は何らの影響は及ぼしません。従って、埃とか垢は常に排除されるであろうし、高濃度酸素分圧による影響はありません。

        (平成12年8月)


15-Q2:失禁のある患者さんにはオムツを使用していますが、何か問題がありますか。

A2:結論的には、問題はありません。安全協会Q&Aの中の、第3号Q1に適切な答えがありますので、参考として下さい。

        (平成12年8月)


15-Q3:HBOの救急適応に、脳塞栓とありますが、脳血栓を含めていないのは何故でしょうか。

A3:保険上の問題ですので、よく、ご存じのように、必ずしも医学的な正当性があったから脳血栓が救急適応にならなかったというわけではないとご理解を頂く必要があります。それを理解いただく最も良い例として、アメリカのHBO適応には脳塞栓や脳血栓などが入っていないことがあります。では、日本でこのHBO適応に関して、薬物治験と同じ様な規模で行われたかというと、文献をひもといてもその様な報告は見あたりませんし、薬物の適応と同じく、一定の期間で見直しが必要であることは言うまでもありません。この原則に従って、HBO治療適応が載っている安全基準の全面的な見直しが行われなければならないと思われます。

        (平成12年8月)


15-4:脳梗塞の場合、発症から6時間以内の急性期にHBOを用いるのが効果的と考えますが(虚血に対する血栓溶解治療との併用・脳保護作用)それでよろしいでしょうか。

A4:HBOの臨床的効果に関しては、その他の医療一般についてのように、各人によりまちまちでないかと思われます。ここで、脳梗塞の発症後6時間以内の急性期にHBOを用いる際の臨床効果に関しては、極端な話、TIAも含まれるでしょうし、心原性の重症な変化をする脳塞栓も含まれますし、必ずしもHBOを用いるべきかどうか、確定しにくいのではないかと考えます。また、虚血に対する血栓溶解治療との併用で、HBOに脳の保護作用を求める考え方かと思われますが、A3にありますように、HBOの脳保護作用は世界的にも必ずしも認められていないのではないかと思われます。

 また、保険では少なくとも脳梗塞の救急適応は認められていませんので、脳塞栓に限られることになり、心原性の重症な病態に対して、急性期にHBO中、心臓の管理まで出来るかどうか、非常に困難な状況が予想されます。

        (平成12年8月)


15-Q5:脳疾患に関して、保険適応の表現(表記)をもっとわかりやすく、紛らわしくないようにしていただければ幸いです。

A5:おっしゃるとおりです。現在の神経系疾患の分類上、必ずしも適切でない保険適応の脳疾患、神経系疾患等があるように見受けられますが、これは保険上の適応疾患名であり、解釈の仕方がより広く行えると考えると、HBOを臨床的に使う際には、よい適応疾患名であるとも言えます。どちらにしても、現在の神経系疾患の病名に合わせた適応疾患病名にすべきことは明白なことであります。今後の課題です。

        (平成12年8月)